SNSキャンペーンの設計は「応募方法×賞品」のバランスにあり

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SNSキャンペーンを企画するうえで、多くの担当者が悩むのが「応募方法の設計」と「景品選定」です。応募数を増やすなら参加ハードルが低いキャンペーンスタイルが効果的ですが、それだけでは本当に届けたい層にリーチできるのか不安です。

本ブログでは、応募方法による参加ハードルとインセンティブのバランスを、どのように設計すればよいのか解説したいと思います。

SNSキャンペーンでよくある課題とは?

SNSキャンペーンは、手軽に実施できるプロモーション手法として多くの企業が活用しています。特にX(旧 Twitter)の「フォロー&リポスト(リツイート)」キャンペーンや、Instagramの「フォロー&いいね」キャンペーンは、参加ハードルが低く、短期間で多くの応募数を集められるため人気のキャンペーンです。

しかしその一方で、「実施したもののフォロワーが増えたが、エンゲージメントが伸びない」といったSNS担当者の方々の声も少なくありません。

このような結果になってしまう主な理由は、「応募数=効果」としてしまい、キャンペーンの目的やターゲットに応じた設計がなされていないことにあります。

SNSキャンペーンにおける最大の課題は、「誰に、どんな行動をしてもらいたいのか」を明確にし、それに適した応募方法と景品選定を設計できているかどうかということになります。

次にこの課題の一因となる賞品の選び方について、詳しく見ていきましょう。

フォロワー増加に影響する賞品選び。

景品選定は参加数に影響する

キャンペーンにおける景品選定は、応募数を左右する重要な要素の一つです。日常生活で使いやすく、実用的で消費しやすいアイテムをプレゼントすることで、幅広いユーザーの関心を引き、応募への動機につながることが期待されます。

一方で、非売品のノベルティや特製グッズなどの限定アイテムは、幅広いユーザーからの支持を得にくい場合があります。
しかしながら既存のファン層の心をつかみやすく、企業アカウントや商品・サービスへの関心が高い、熱量のあるユーザーからの応募が見込まれます。

参考図:景品選定は参加数に影響します。応募数が多いのはライト層が増える金券類。つづいて食品類、家電類とつづきます。ファン層が多いのが限定商品類で、応募数が限定される場合があります。

広く受け入れられる賞品

< 汎用性の高い賞品例 >

金券類

SNSキャンペーンで広く参加者を集めたい場合、誰にとっても使いやすいため、金券類(電子マネー券・商品券など)は人気の高い賞品です。

またキャンペーン事務局としても、準備や送付などが比較的簡単なこともあり、フォロワー数の増加を狙う企業にとっては、有効な選択肢のひとつと言えるでしょう。

食品類

食品もまた、日常生活にフィットし消費しやすいことから、多くの応募が見込まれる定番の賞品です。特に自社商材が食品である場合は、SNSキャンペーンとの相性が良く、新商品やブランドの認知促進にもつながります。

ただし、食品を扱う際は、安全性や衛生管理に関する規制への配慮が必要です。適切な管理体制を整えたうえで実施しましょう

家電

テレビやドライヤーなどの家電製品は、実用性が高く生活に馴染みやすいため、多くの人にとって魅力的な賞品となります。

ただし、家電は単価が高くなりがちなため、キャンペーンの予算によっては当選数が限られることもあります。そのため、企画の目的やターゲットのニーズに合ったアイテムを選定し、全体のバランスを考慮した設計が重要です。

フォロワーは増えたけれど、その後の動きは?

SNSキャンペーン後のライト層の増加

汎用性の高い賞品と、参加方法がシンプルなX(旧 Twitter)の「フォロー&リポスト(リツイート)」型のキャンペーンを組み合わせることで、短期間で多くの応募やフォロワーを集められるケースは少なくありません。

一方で、企業アカウントや商品・サービスへの関心がそれほど高くない「ライト層」からの応募が増えやすい点には注意が必要です。

特に気をつけたいのが、賞品の獲得を主な目的とした「懸賞アカウント(通称:懸賞垢)」の存在です。こうしたアカウントは、キャンペーン終了後にフォローを外したり、通常投稿への反応が乏しくなったりする傾向があります。その結果、「フォロワー数は増えたけれど、エンゲージメントが下がってしまった」という状況に陥ることもあります。

※懸賞アカウントとは:
X(旧Twitter)上で見られる、SNSキャンペーンへの応募を主な目的としたアカウントのこと。

目的が「認知拡大」なら、汎用性の高い賞品が有効。

フォロワー増加と認知拡大にフォーカス

SNSキャンペーンでは、あらかじめ目的を明確にしておくことが重要です。もし目的が「アカウントや商材の認知拡大」や「話題づくり」であれば、その意図を社内で共有し、共通認識として持っておくとよいでしょう。

そのうえで、ギフト券などの汎用的な賞品を効果的に活用し、より多くのユーザーにブランドや商品を知ってもらうきっかけとなるような設計を心がけましょう。

>>参考:  スシロー (@akindosushiroco)/ 2025年5月実施
回転寿司のチェーン店、スシローの公式X(Twitter)アカウントでは、「フォロー&リポスト(リツイート)」キャンペーンを実施し、新メニューの紹介をしていました。賞品は10名にスシロー店舗で使えるお食事券をプレゼントするものでした。

参考事例の投稿画像:スシロー (@akindosushiroco)/ 2025年5月実施のX(旧 Twitter)キャンペーン。店舗で使える1万円分のお食事券でフォロー&リポストで応募できるので、チャレンジしてみようと!カジュアルに感じます。

次に、その対極にあるコアなファン層向けの賞品について考察していきます。

コアなファン層をひきつける賞品の可能性

その企業の商品ユーザーとの交流や、ブランドへの共感を育てたいと考える場合、金券やギフト券は必ずしも最適とは言えない傾向にあります。そこで注目したいのが、自社ならではのオリジナル賞品や、限定性の高いグッズです。

たとえば、非売品のノベルティや、社内でしか使われていない特製アイテム、企業キャラクター(ゆるキャラ)の限定グッズなどは、その企業やブランドに対して、すでに関心のあるコアなファン層が反応する傾向にあります。

フォロワーは大きくは伸びないが、ファン層の反応が増える。

応募数こそ絞られるデメリットではありますが、ファン層からの参加者の質はぐっと高まりやすくなります。

こうした賞品は「欲しい人にだけ刺さる」ものだからこそ、「応募=好意」の表明になりやすく、SNSキャンペーン後のエンゲージメントや企業アカウントへの継続的な関心にもつながりやすいのです。

また当選者から賞品到着後に、当選報告や開封投稿などもあり、UGC(※)が自然に生まれやすく、キャンペーンが終わったあとも波及効果が続くのも大きなメリットです。

キャンペーン応募によって得られたフォロワー数を「数より質」であると目標を設定した場合、その企業の「らしさ」を兼ね備えた景品選定が、結果的にファン層からエンゲージメントをもたらすようです。

※UGC :
User Generated Content(ユーザー生成コンテンツ)の略で、一般ユーザーが自発的に作成・発信するコンテンツを指します。具体的には、SNSの投稿、ブログ記事、レビュー、動画など、企業が作成したものではない、ユーザー自身が作成したコンテンツがこれに該当します。

>>参考:  ドラゴンクエスト宣伝担当(@DQ_PR)/ 2025年5月実施
ゲーム「ドラゴンクエスト」シリーズの公式情報を発信しているX(旧Twitter)アカウント「ドラゴンクエスト宣伝担当」では、期間限定のカフェメニューに関する告知と連動したキャンペーンが実施されました。
スクウェア・エニックスの人気キャラクターをテーマにした店舗にて、ドラゴンクエスト仕様のカフェメニューを展開。そのタイミングに合わせて、スライムをモチーフにした本格的なコーヒーグッズが当たるSNSプレゼントキャンペーンも実施されました。
ゲームファンの心をくすぐる賞品を用意することで、共感や拡散を促す工夫が見られる事例です。

参考事例の投稿画像:ドラゴンクエスト宣伝担当(@DQ_PR)/ 2025年5月実施。ドラクエのデザインがされた本格的なコーヒーグッズは、ゲームファンならぜひとも欲しくなる賞品です。

応募方法のハードルは、参加モチベーションに直結する。

SNSキャンペーンを企画する際、見落とされがちなのがユーザー側から見た応募のしやすさです。魅力的な賞品を用意しても、応募方法が面倒だと参加率は下がる傾向にあるため注意が必要です。

参考図:応募方法のハードルは、参加モチベーションに直結!参加ハードルが低いものであるほど、応募が増えライト層のフォロワーが増えますし、ひと手間増えると少し参加ハードルが高くなるため参加者にファン層が増える傾向にあります。

低ハードル:リポスト(リツイート)または「いいね」をするだけで完了

SNSキャンペーンの中でも、特に参加ハードルが低く、多くのユーザーの参加が見込めるのが以下のようなシンプルな形式です。

X(旧 Twitter)の場合:「フォロー&リポスト(リツイート)」

Instagramの場合:「フォロー&いいね」

いずれも、企業アカウントをフォローし、指定の投稿をリポストや「いいね」するだけで応募が完了します。
この手軽さから、SNSに慣れていない一般ユーザーや、商品やサービスをあまり知らないライト層も参加しやすいため、フォロワー数の増加には効果的です。

>>参考:  Kiri® Japan/キリ(@kiri_jp)/ 2025年3月実施
クリームチーズブランド、キリジャパンの公式Instagramアカウントでは、「フォロー&いいね」キャンペーンを実施していました。応募課題の「新生活のワンシーン」をテーマにした写真を投稿するとさらに当選率がアップするという2段階で応募方法が企画されていました。

参考事例の投稿画像:Kiri® Japan/キリ(@kiri_jp)/2025年3月実施のインスタキャンペーンで。フォローして「いいね」すれば完了。もし写真投稿すると当選率をアップ!どういう企画です。

中ハードル:テキスト投稿を加えてエンゲージメントを促す

ライト層の参加が多く想定される賞品の場合は、キャンペーン開催期間中だけでもエンゲージメントを高めるためにも、応募方法に投稿型のアクションを取り入れるのがおすすめです。

X(旧 Twitter)の場合:「フォロー&リポスト(リツイート)」

キャンペーン指定のハッシュタグを投稿する形式や、キャンペーンに沿ったテーマに対するアンサー文を投稿する形式で設計をします。

>>参考:  [公式] ベースフード (@BASEFOOD)/ 2025年5月実施
栄養食品メーカー、ベースフードの公式X(旧 Twitter)アカウントでは、「フォロー&ハッシュタグ」キャンペーンを実施していました 低糖質パンで知られるブランドですが、今回のキャンペーンでは、パン商品以外の存在をまだ知らないライト層に向けて認知を広げるためと思われます。応募者は指定のキャンペーン用ハッシュタグと好きな味のハッシュタグを付けて投稿するため、X(旧 Twitter)上にハッシュタグ利用が増加します。

参考事例の投稿画像:[公式] ベースフード (@BASEFOOD)/ 2025年5月実施のX(旧 Twitter)キャンペーンで、新商品の焼きそばの紹介を兼ねているの拡散認知をねらいつつ、ハッシュタグ「#ベースヤキソバ100万突破 」と好きなお味を投稿する必要があります。キャンペーン開催時にエンゲージメントを得られるように工夫しています。

Instagramの場合:「フォロー&コメント(絵文字)」・「フォロー&コメント(テーマ返答文」

開催側のアカウントが投稿したキャンペーン投稿に、絵文字でコメントによる反応を求めたり、テーマに沿ったコメント文を投稿してもらうように設計します。

>>参考:  ネスカフェ(NESCAFÉ) (@nescafe_jp)/ 2024年9月実施
ネスレ日本株式会社が展開するコーヒーブランド・ネスカフェの公式Instagramアカウントでは、「フォロー&コメント(絵文字)」キャンペーンが実施されました。
パッケージデザインの色に対応する絵文字をコメントに投稿するだけという、気軽に参加しやすい内容が特徴です。また、「その商品が好きな理由」を添えてコメントすると当選率がアップするという仕掛けもあり、ユーザーの参加意欲を自然に引き出す工夫がされていました。

参考事例の投稿画像:ネスカフェ(NESCAFÉ) (@nescafe_jp)/2024年9月にインスタキャンペーンを実施。丸の絵文字でコメント投稿するたけで応募完了。さらに、その賞品が好きな理由も添えると当選率アップの2段階企画です。こちらもキャンペーンを実施期間にエンゲージメントをアップする対策をしていました。

高ハードル:UGC投稿を通じて深いエンゲージメントを獲得

「その商品を利用した写真を撮って投稿する」や、「体験談やアイデアを書く」など、ユーザーにUGCの投稿を求めるキャンペーンは、参加のハードルが高くなります。

応募に手間がかかり難しそうという印象が先行し、応募数は自然と限定される傾向にあります。

しかしその分、参加者はファン層が多くなり、企業やブランドに対する関心度や愛着は高く、投稿内容にも熱意や共感が込められるケースが多く見られます。

SNS上におけるUGC投稿は、それ自体がキャンペーンの二次的な宣伝素材としても機能します。また、企業側にとっても「実際のユーザーの声」を可視化できる貴重な機会となり、今後のマーケティング施策に活かせるメリットも大きい形式です。

>>参考:  新宿中村屋 お菓子【公式】(@nakamuraya_kasi)/ 2025年5月実施
食品製造・販売を手がける新宿中村屋のお菓子公式X(旧Twitter)アカウントでは、「フォロー&写真投稿」型のキャンペーンが実施されました。
参加ユーザーは指定ハッシュタグ「#辛肉まんフォト」を添えて、食卓で商品を楽しむ様子を写真付きで投稿します。
指定ハッシュタグをタップすれば、他のユーザーの投稿が検索結果としてソートで表示されるため、参加者同士での盛り上がりも生まれやすく、UGCを活用したキャンペーンの良い事例といえます。

参考事例の投稿画像:新宿中村屋 お菓子【公式】@nakamuraya_kasi)/ 2025年5月にX(Twitter)キャンペーンを実施。#辛肉まんフォトというハッシュタグをつけて、食卓の写真を食べている写真を投稿して応募完了。キャンペーンを知らなくても参加者から投稿されたカレーまんの画像をみる機会が、他のユーザーに増えるなどプロモーションとしてキャンペーンを活用していることが分かります。

まとめ:賞品と応募方法のバランスをどう取るか?

SNSキャンペーンの効果を最大化するためには、実施目的をベースに、景品選定と応募手法の設計こそが、SNSキャンペーンの鍵となります。

参考図:「応募にどれだけの時間・手間がかかるのか」×「当たった時のううれしさ」が企画時のポイントです。

「応募にどれだけの時間・手間がかかるか」×「当たったときの嬉しさ」の掛け算でユーザーの行動意欲が決まるため、バランスが崩れると応募数もファンの満足度も下がってしまいます。

①SNSキャンペーンを実施する際に目的を明確にしましょう

フォロワー数や認知拡散を重視するのか、ファンの発掘や交流を目的としたり、SNS上にUGC投稿を増やすためなのか、明確にすることで、景品選定と応募方法を選びやすくなります。

イラスト図:SNSキャンペーンを実施する5大目的→①フォロワー増加、②商材の認知拡散、③一般ユーザーとの交流、④周年記念イベント、⑤UGC増加。

②景品設定をしましょう。

景品選定をするポイント

③キャンペーン形式(参加方法)を設定しましょう。

キャンペーン形式(参加方法)を決定するポイント

②と③が前後しても問題はありません。
重要なのは、キャンペーンの目的に応じて、ターゲット層を決め、キャンペーン形式(応募方法)を策定し賞品を選ぶことです。

参考図:ライト層も多い場合とファン層が多い場合。X(旧 Twitter)とInstagramのキャンペーンはどれなのか、そして景品設定も合わせて見られるにしました。

SNSキャンペーンは、「認知の拡大」「ファンの育成」「UGCの蓄積」など、さまざまな成果につなげることができます。

一方で、「キャンペーン形式(参加方法)」と「景品選定」の組み合わせによっては、何のためにSNSキャンペーンを実施したのかという状態になることがあります。

だからこそ、キャンペーンの目的から逆算して、どういった層に参加してもらいたいのか、そのための賞品を何にするか、そして応募ハードルをどのようにするのかを組み立てることで、効果的で意義ある施策にしましょう。

筆者自身も、SNSキャンペーンの企画では毎回悩みながら取り組んでいます。同じように日々SNS運用に向き合っている皆さまにとって、本ブログが少しでもSNSキャンペーンの企画設計のヒントになれば嬉しく思います。

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